大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和29(あ)3473 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

被告人の上告趣意は、事実誤認の主張に帰し、適法な上告理由にあたらない。

弁護人笈川義雄の上告趣意について。

記録によると原審は昭和二九年七月一二日、控訴趣意書提出最終日を同年八月二

〇日と指定し、即日被告人に対し、右最終日の通知および弁護人選任に関する通知

をしたのであるが(一二〇、一二一丁)、被告人は(最後まで)国選弁護人選任の

請求をすることなく、同年八月一八日みずから控訴趣意書を提出したので、原審で

は同年九月八日国選弁護人を選任し、同月二一日の第一回公判期日には、右弁護人

は被告人の提出した控訴趣意書に基いて弁論をしているのである。以上のように、

被告人は全然国選弁護人選任の請求をしなかつたのであるから、控訴趣意書提出期

間経過後に国選弁護人が選任され、弁護人による趣意書提出の機会が与えられなか

つたからといつて、何等、憲法三七条三項の保障する被告人の権利の行使を妨げた

ものではなく、憲法の同条項違反の問題を生ずるものでないことは、当裁判所大法

廷の判例に照して明らかである(昭和二五年(あ)二一五三号同二八年四月一日判

決、集七巻四号七一三頁参照)。従つて、所論は採用できない。

また記録を調べても、本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められな

い。

よつて同四〇八条一八一条により主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見である。

昭和三〇年二月一五日

最高裁判所第三小法廷

- 1 -

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!